遺産分割の方法

相続が生じた時、相続人が複数いる場合や遺言書が無い場合などは、誰がどの遺産を引き継ぐかを相続人同士で決める話し合い(遺産分割協議)が行われます。

生前に相続について話し合っていたご家族ならまだしも、「遺産分割協議なんて初めてです。」という方が多数だと思います。平等に分けるなら、「遺産の土地・家屋・お金を相続人みんなで均等に分けましょう。」となりますが、なかなか相続人さん各自のお考え、遺産の内容などによって単純に分割ができないことも多々あります。
そこで、分割の選択肢として、現物分割以外の遺産分割の形態をご紹介します。

現 物 分 割

例えば、遺産として土地、家屋、預貯金があり、これを相続人である兄と妹の2人で分ける場合、土地と家屋を長男である兄に、預貯金を妹にといった、遺産そのものを現物で分割する方法があります。
これが現物分割というもので、最も基本的な遺産分割の方法となります。

代 償 分 割

上記と同様の遺産内容(土地、家屋、預貯金)で、これを兄と妹の2人で分ける場合。
実家には今回お亡くなりになった母(夫は数年前に他界)と、その子供である相続人の長男(兄)が住んでいて、長女(妹)は遠方に嫁ぎ、その地で生活しているような状況においては、兄は現在の住まいである土地と家屋を、長女は生家の土地・家屋よりも、お金を相続できればと考えることがあります。

ただ、今回の相続において、遺産は土地・家屋のほかに、長女に渡せる遺産の預貯金がほとんどありませんでした。遺産の土地・家屋を売ってお金に換えて、それを長女に渡せれば良いのですが(換価分割)、長男は現在住んでいる愛着のある生家を手放したくありません・・・

このような場合には、長男が遺産の多くを占める土地と家屋を引き継ぎ、長女は遺産の預貯金を相続し、不足分を長男が長女へ自分のお金を支払うという代償分割が活用できます。

(具体例)
遺産総額6,000万円(土地5,000万円、家屋800万、預貯金200万円)を兄妹二人で半分づつ(3,000万円づつ)分けたいのですが、兄が遺産の土地と家屋の合計5,800万円を取得し、妹が遺産の預貯金200万円を取得すると、兄が2,800万円多く貰うこととなり、半分づつになりません。

そこで、兄が妹へ、自分のお金2,800万円を代償金として支払うことでバランスをとります。
結果として、兄は土地5,000万円+家屋800万円-お金の支払2,800万円=3,000万円を取得、妹は預貯金200万円+兄のお金2,800万円=3,000円を取得となります。

なお、代償財産としてお金を支払うのではなく、自分の土地や建物を代償として渡す場合は、土地や建物の譲渡とみなされるので、注意が必要になります。

換 価 分 割

上記と同様の遺産内容で、これを兄と妹の2人で分ける場合において、兄も土地・家屋ではなくて、お金で欲しいといった時や、兄に代償金を支払う能力がナイ時などは、土地・家屋を売却して、売却で得たお金を2人で分けるという換価分割という方法があります。

換価分割においては、現物分割と異なり、換価(売却)するので、土地や建物など譲渡所得の対象となる資産を換価(売却)する場合には、譲渡所得税についても考える必要が出てきます。