3,000万円の特別控除

相続後に、引き継いだ遺産である土地や家屋の譲渡について、ご相談を受けることがあります。この譲渡にかかる税金は、「相続税」や「贈与税」ではなく、「譲渡所得税」となりますが、その譲渡所得税の申告にあたり、事前の相続が関係してくるケースがあります。

本来、土地や建物を売って、儲けが出たら、その儲けに対して所得税・住民税が課されます。例えば、6,000万円で買った土地と建物を7,000万円で売却した場合、7,000万円-6,000万円=1,000万円が儲けとなり、その儲けに対して所得税が10~30%、住民税が4~9%課されます。

マイホームを譲渡した場合の特別控除

ただし、自分が住んでいるマイホームを売って儲けが出た場合には、その儲けから3,000万円を控除できる特例があります。こちらが、「居住用財産の譲渡所得の特別控除」というものです。

上記の例ですと、7,000万円-6,000万円=1,000万円が儲けですが、これがマイホームの売却であった場合、1,000万円の儲けから3,000万円までの特別控除を受けられますので、儲けは0円となり、土地建物の譲渡に対する所得税、住民税は生じなくなります。

◆3,000万円の特別控除が受けられる主な要件は、以下の通りです。
自分が住んでいる家を売る。又は自分が住んでいる家とともに、その敷地等を売る。
②以前に自分が住んでいた家や敷地等を売る場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る。
③売り手と買い手が、親子関係や夫婦など特別関係者でないこと。など

空家を譲渡した場合の特別控除

さて、初めに述べた相続とその後の譲渡が関係してくるケースとは、次の様なものになります。
例えば、母が住んでいた実家の建物とその敷地を子供が相続にて引継いだとします。しかし、子供は既に実家を出て、別の場所に自分で家を買って住んでいるので、実家の土地家屋は売却しようと思っています。
このような場合に、母が住んでいた実家の土地家屋を空き家の状態で売却し、儲けが出たときは、上記の3,000万円の控除が受けられるでしょうか?

◆相続等で取得した土地家屋を譲渡した場合に、3,000万円の特別控除が受けられる主な要件は、以下の通りです。
①被相続人が住んでいた家屋・土地の要件
・昭和56年5月31日以前に建築された建物であること
・区分所有建物登記がされている建物でないこと
・相続開始の直前において、その建物に被相続人以外に住んでいた人がいなかったこと
・上記の建物の敷地となっている土地
・平成31年4月1日以後の譲渡では、被相続人が要介護認定等を受け、老人ホーム等に入所していた場合でも、一定の要件を満たせば、被相続人はその土地家屋に居住していたものとされます。

②譲渡の要件
・一定の耐震基準を満たす家屋を売る。又は家屋と共にその敷地を売る。
・家屋を全て取り壊した後に、その敷地を売る。
・相続開始があった日から3年を経過する年の12月31日までに売る。
・売却代金が1億円以下であること。
・売り手と買い手が、親子関係や夫婦など特別関係者でないこと。など