H31年度 税制改正大綱②

前回に続き、平成31年度税制改正大綱の資産課税(相続税と贈与税)に関するご紹介を致します。
民法の改正で、成人年齢が20歳から18歳に引き下げされること、配偶者居住権が創設されること、などに伴い、各種相続や贈与に関する制度の適用要件・建物等の評価額に影響が生じてきます。

1.現在は成人年齢20歳で区分している下記制度が、18歳に引き下がります。
相続税の未成年者控除(現行は20歳未満が対象ですが、18未満が対象となります。)
相続時精算課税制度(現行は受贈者が20歳以上が要件ですが、18歳以上となります。)
直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例(同上)
相続時精算課税適用者の特例(同上)
非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度及び特例制度(同上)

これらは、改正民法の施行に合わせて、2022年4月1日以後の相続若しくは遺贈又は贈与に対して適用されます。

2.配偶者居住権等の評価額
民法の改正に伴い2020年4月1日から配偶者居住権の制度が施行されます。配偶者居住権は、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人が所有する建物を無償で使用及び収益することのできる権利です。
配偶者居住権や配偶者居住権の設定された建物の評価額について、以下の方法とすることが発表されました。

①配偶者居住権
建物の時価-建物の時価×(残存耐用年数-存続年数)/残存耐用年数×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

※残存耐用年数又は残存耐用年数から存続年数を控除した年数が0となる場合は、「(残存耐用年数-存続年数)/残存耐用年数」=0とする。

②配偶者居住権の設定された建物(以下「居住建物」)の所有権
建物の時価-配偶者居住権の価額

③配偶者居住権に基づく居住用建物の敷地の利用に関する権利
土地等の時価-土地等の時価×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

④居住建物の敷地の所有権等
土地等の時価-敷地の利用に関する権利の価額

※上記用語について
「建物の時価」:配偶者居住権が設定されていない場合の建物の時価
「土地の時価」:配偶者居住権が設定されていない場合の土地の時価
「残存耐用年数」:所得税法による居住用建物の耐用年数(住宅用)×1.5-居住用建物の築後経過年数
「存続年数」:
イ 配偶者居住権の存続期間が配偶者の終身の間である場合は、配偶者の平均余命年数
ロ 上記イ以外の場合は、遺産分割協議等により定められた配偶者居住権の存続期間の年数(配偶者の平均余命年数を上限)